まとめ/考察

米国の電子タバコ販売禁止について自分なりに整理してみた


海の向こうでやけに騒いでる昨今の電子タバコ界隈。とにかくうるさい。

何が起こってる?10秒で教えて。

  1. 米国疾病管理予防センター(CDC)によると、全米で電子タバコの使用に関係した肺疾患の可能性がある症例が450以上。
  2. カリフォルニア、イリノイ、インディアナ、ミネソタ、オレゴン、カンザス州で6→15人の死亡を確認。
  3. 若者の間でVAPEが大流行。米国の高校生4分の1以上が使用。2017年から約10%も上昇。
  4. それらを懸念し、本日、ドナルド・トランプ大統領とアレックス・アザール厚生長官、ノーマン・シャープレスFDA長官が会談。
  5. 結果、10代で人気のあるフレーバー付きVAPEを販売禁止とする計画を発表。
  6. ちな、PMTA申請を通った製品とタバコ風味はOK。

 

ふーん。ホワイトハウスまで行ってるのね・・これは意外に重大事。

要するに「米国の若者にこれ以上電子タバコで健康被害を与えない!」っていうのが大義名分かと思われる。

一方、世間では・・

  • 「よくやった!早い対応だ!」
  • 「ナイスー」
  • 「電子タバコ\(^o^)/」
  • 「やっぱりアイコスはダメ!」
  • 「加熱式タバコと電子タバコは違う!(必死)」
  • 「VAPEな (やや必死)」
  • 「普通のタバコはいいんだw」
  • 「それより銃をなんとかせーよ」
  • 「禁煙ガー」
  • 「健康被害があったのは大麻を吸引したからだ!そもそも大麻ビジネスの利権争いじゃねーか!」
  • 「こんなん規制し始めたら、何でも規制しなあかんくなるよ?」 KH

 

などなど、様々な意見が予想以上に多く飛び交っていた。

もはや対岸の火事とは言ってられない米国の電子タバコ事情。

本日はそれら情報の整理と今後益々窮地に立たされるであろうVAPERの末路について書いていきたい。



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情報の信憑性と海外メディアの動向


まず、こういった海外のセンセーショナルなニュースを国内記事だけで鵜呑みにする方は非常に多い。

記事内容には必ず「ソース元(ネタ元)」というのがあり、上の記事は時事通信。

で、そのソースを辿っていくと、それら支局や海外メディアになる。



他、CNNもCNBCも大手はだいたいどこも内容は一緒。しかし、他の電子タバコに関する記事などは個性が出る。

なんにせよ、こういった情報は一方向だけでなく多角的な視点で見ないと全体像が把握しにくい。

今後のFDA(米国医薬食品局)の取り組みと方針は公式ホームページに掲載。

また、今回の会談は実際の動画でも公開されているため、トランプ氏の発言なんかは粗方知ることもできる。

動画はブルームバーグのニュースで下がワシントンポスト(ノーカット/字幕なし)。字幕ありのCBS動画もある。

特にブルームバーグニュースは解説がわかりやすい。電子たばこ追放運動に170億円を寄付した元NY市長が創設者だがヒイキ寄りでもない。


早い話、冒頭でも述べたが

  • 電子タバコによる若者の健康被害への懸念(厚生長官)
  • ウチにも13歳の子供がいる!そりゃアカンわ!(トランプ氏)
  • 早急に対応が必要→人気のあるフレーバー付きは禁止する!
  • 今すぐは無理だけどすぐに指針をまとめます!(FDA長官)
  • ちな、PMTA申請は今からでも遅くないよ(費用約100万ドル)
  • 関連小売業者\(^o^)/

 

尚、PMTA申請(premarket tobacco application)とは米国でタバコ製品を合法的に販売する際にFDAに申請、認可してもらわなければならないこと。※分析依頼とは違う。


最終期限は当初2018年だったが、前長官ゴットリーブ氏は2022年まで延期すると発表。

しかしAAP訴訟(原告/米国小児科学会)により連邦裁判官は10ヶ月以内に製造業者へ申請するようFDAに要請。これにより期限が急激に早まった。それに加えて今回の追い打ちである。



ちなみにPMIのIQOSは2017年申請、今年5月に晴れて認可。米国で人気が高いJUUL Lab、他、JTI Logic、Mybluは審査中。

ここで少しPMIとJUUL Labとの関係について触れておきたい。

まず、JUUL株の約三割を保持しているアルトリアグループは元々PMIと同じ会社。※米国だけの販売権

それが10年ほど前に別会社となり、最近の合併協議も今回の件が原因か定かではないが打切りとなっている。※現在のJUUL Lab CEOは元アルトリアの副社長。

なのでアイコスとJUULの関係はいまのところない。また、JTもJUULの株主という噂もあるが全くの出鱈目。

おそらくJUULの前身であるpax labの製品「ploom」の商標権取得から来ていると思われる。

さて、話が飛んだが、これらを整理すると、

たばこ風味以外でも期限まで販売できるけどそれはFDAで認可されたものしか無理だよ」ということ。

それでも莫大な費用がかかるPMTA申請。おいそれと出来るわけがない。

ちなみに代行業者に委託すると下記のような工程が必要となるらしい。これを見ればいかに困難なことかよく分かるだろう。

  • 前臨床試験および臨床試験
  • 文献レビューと毒物学評価
  • 科学的レビューと文書の執筆
  • 製品の特性評価、分析および製造評価
  • 毒物学、安定性および排出物試験
  • ハザードリスク分析
  • DMFの準備を含む、CMCおよびGMPの完全サポート
  • 書類提出およびFDAへの提出

 

まったくもってサッパリである。しかも申請しても審査に通るという保証はなく、関連小売業者は早くも絶縁状を叩きつけられたことになる。

ただ、気になるのは「たばこ風味ならOK」という意味。FDA未認可でもタバコフレーバーなら販売可能なのか?。その辺りの疑問は残る。

FDAのマーケティング承認のために市販前タバコ申請(PMTA)を提出した現在のvaping製品はありません。現在市場に出ているすべての製品は、FDAの執行裁量により、いつでも取り消すことができます。(Vaping360)

しかし今のところ、FDAにPMTA申請で認可されたVAPE関連製品などはないという。※認可されたIQOSは加熱式タバコ

また、補足として現在のところ米国で電子タバコの販売が禁止されている州はサンフランシスコ市とミシガン州。

ニューヨーク州もフレーバー付きのみ販売禁止。尚、購入使用が認められるのは21歳から。今回のノリでインドも禁止の動きへ。※2019/9

 

健康被害があったのは大麻成分を吸引したからか?


トランプ政権になってから米国の大麻産業は2018年度農業法改正によって盛んになる。そして、

米国で大麻を娯楽目的として使用できる州は意外と多い

(アラスカ、カリフォルニア、コロラド、メイン、マサチューセッツ、ミシガン、ネバダ、オレゴン、バーモント、ワシントン)※2019/9

2022年までに19億ドル市場と見込まれているため、今後、合法大麻ビジネスは嗜好品シェアを撹乱させることだろう。


そうした緩い背景もあってか、10代の若者が電子タバコで大麻成分を吸引する機会は日常に多く存在するとCNNの記事では書かれている。

ただし、向精神作用があるTHC成分を含むリキッドが人体にどのような影響を及ぼすかは分からない。

また、ニューヨーク州保健局で行われた実験では、大麻含有サンプル中に「非常に高いレベルのビタミンEアセテートが検出された」とある。


大麻成分にビタミンE。薬学的知見はサッパリだが「電子タバコで健康被害!死亡!」は違法なTHC製品による可能性が高いとのこと。

これについてボストン大学公衆衛生学部地域保健学科教授のご意見。CDCの怪しいところなどもツッコんでる。

しかし確固たる根拠に欠けるため、この辺りの情報は曖昧に報道されるのかもしれない。

 

我らがVAPER側はどう思っているのか?

さて、このような事態になり、米国のVAPERははたしてどう思っているのだろうか。心境は我々どころではないと思うが・・

AVA(American Vaping Association)では声明文を発表。

何千もの中小企業を破壊し、元喫煙者を喫煙に戻すことは、麻薬の売人が汚染されたTHCカートリッジを販売するのを止めることには何もしません。フレーバーの禁止は、安全制御を一切行わずに動作するさらに別の数十億ドル規模の闇市場の創出につながるだけです。(Chromeブラウザ訳)


AVAは電子タバコで禁煙!をモットーとする組織。つまるところ「違法THCが悪い!VAPE自体は悪くない!」。

一方、他の団体、VTA(Vapor Technology Association)でも提案書を昨日付けで公開。



VTAは全国貿易協会とある。ロビー活動を得意とした中小企業の味方なんだとか。

要約すればTHC製品を物凄く嫌っており、禁煙サポートとなる電子タバコを排除することは紙巻きタバコの死亡者数を増やすことにも繋がると警告している。

そしてVaping360のまとめ記事。

では、VAPE系Youtuberはどうだろうか。私が気づいた動画では今のところVaping With VicとSMM(マット氏)。それとVape Team。

長いのでライブですかね。相変わらずスラングばかりで何言ってるのかサッパリわからない。




とりあえずマイク氏とVapnFaganは面倒くさそう。マットさんだけ力入っているノリ。黒キャップ&ヒゲ率がもの凄い。

他、E-cigフォーラムも一応目を通しましたがほとんどグチばかりで日本と言ってることが変わらない。

 

日本への波及は主に米国産リキッドやクローズドシステムによって現れるか?

問題はこのような事態が日本へどのような影響を及ぼすのかということ。もし何も起こらなければそれこそ対岸の火事である(私自身にとっては)。

普通に考えられるのはFDAの認可が降りなかった製品やリキッドメーカーの廃業。米国との取引がある関連メーカーの業績悪化。

それと、もはや諸悪の根源ともなっているENDSの代表格「JUUL」などのようなクローズドPODへの影響。

ENDS( electronic nicotine delivery systems/電子ニコチン送達システム)とは海外の関係機関でよく使われるVAPE製品などの総称。

そのJUULは最近アリババでショップをオープンしたらしく、早々に米国への見切りをつけたもよう。

しかし先に販売されていた京東(JD.com)は中国当局に睨まれ約1週刊で販売中止。そうなるとアリババも怪しいところだ。

こういった手詰まりなJUULの状況を判断してPMIとの合併協議が進まないでいたのかもしれない。

さて、これらニコチン入りリキッド製品は日本国内でも代理店経由で購入が可能。だが今回の件で厚労省に睨まれれば指導が入りそうな勢いではある。

それ以外にも海外からの個人輸入。斡旋サイト。ショップへの立ち入り検査。巷に蔓延している販売用途のDIYリキッド。規制が入りそうなものはたくさんある。

どちらにせよ米国での出来事ほど普及もしていない国内の電子タバコ事情。統計的に測れるほどデータも多くないので健康被害は表立って現れていないと思われる。

また、その小さな市場もこの一件でさらに縮小し、益々話題にも登らないジャンルになるのは間違いないだろう。

だからこそ国から無視されそうで余計に怖いのだ。

ちなみに電子タバコとは異なる加熱式タバコでは厚労省から有害物質の研究データが公開されている。

加熱式タバコの科学的知見/厚労省サイト(PDF)

 

まとめ / 電子タバコは間違いなく有害である


では最後にVAPE(電子タバコ)について私がどう思っているかを綴って締めとさせていただきたい。

個人的にVAPEは大手が作る加熱式タバコ(プルームテック含む)よりもデバイス的に不安で超絶デリケートな生セルバッテリーも扱うことがある。

それに未成年が使用しても日本国内では違法ではない。現在は販売元が自主規制を設けているだけである。

近年益々越境ECが盛んになり、ニコチンリキッドの個人輸入はあたりまえ。それに国内での販売が違法なVAPE製品なども簡単に購入できてしまう。

巷には多種多様なリキッドが存在し、第三者機関への食品分析依頼などしていないメーカーも多い。

どうにも、「リキッドは食品」という意識が低いように感じられる。闇市場がどうだと言う前に既に闇市場な界隈なので消費者としては正直怖い。

そもそもVAPEはリキッドをコイル熱でミスト化する装置であるからして、ニコチン、CBD、THC問わず個人の裁量で何だって入れられるのだ。

これら現状を踏まえると普通に考えて「VAPEは怪しいし、危ない」のはあたりまえだと強く感じる。


もちろん私自身も何らかの有害性があることを知って使用しているし、無害などとハナから思ってもいない。

正確にいえば「VAPEを知れば知るほど有害な要素が見えてくる」のである。

ゆえに今回の件も海の向こうの話ではなく、最低限の知識と責任をもって今一度考えてみる機会なのかもしれない。

 






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